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DROP

なんで、どうして。
思い出すのはあいつの涙。涙。涙。
ひたすらに顔をくしゃくしゃにして、どうして、と言いながら泣いていた。
いつから心がすれ違っていたのか。わからない。
前は許せたことも何故か嫌になってしまったんだ。
勝手に居ついていたあいつが居なくなって、窮屈だった部屋はまた広くなったように感じた。
派手な私服、キャラクターの描かれたマグカップ、なぜかまったく同じで色だけが違っていた歯ブラシ。
あいつが気にいっていた写真とその写真立ても、一緒に選んでしまったカーテンも、なにももうない。
あいつと出会う前の俺に戻っただけだ。なのに。
心だけがあの時と違う。取り戻せない。ああ、俺は一体どこに落としてきたんだろうか。

あいつが居なくなった部屋を探していた。
もしかしたら誰よりもあいつのことを知っていたはずなのに、今はなにも知らなくて。
端から見たらたいそうかっこ悪く見えるだろう。
それだけ必死に、無意識に、あいつをこの部屋で探してしまう。呼んでしまう。
ソファに、テーブルの向こう側に、あいつはいつもいたはずなのに。

お前をひたすらに探して、探して、部屋を探しつくして、ああ、もうお前はいないんだな、そうなんだな、そう思って。
俺はお前を傷つけてばかりだったな。よくお前泣いてたもんな。そのたんびに抱きしめろってせがむんだ。
煩いな、といいながら抱きしめることが、実は俺も嫌いではなくて。
ああ、俺はかっこ悪いな。もう、俺は、疲れた。
お前はすぐ目の前にいたはずなのにな。
いつも、いたのに、な。
ああ、お前はもういない。

------後悔して気づいた時にはもう遅い------
凄く雰囲気小説。奥華子さんの「DROP」の歌詞から。
なにかがあって一緒に居られなくなってしまったさっちゃんとHAYATOのお話。
気がむいたらそのうちHAYATO視点かくかもしれぬ。